バラデューク
1985年にナムコから発売されたビデオゲームです。
内容はサイドビュー任意8方向スクロールのシューティングゲームです。低重力のフィールド内を比較的大きな自機で動き回り、オクティと呼ばれる固定敵を全て倒し出口に入ると一面クリアとなります。全48面です。
システム的に目新しい箇所もなく、ゲーム性も薄い名作とは云い難い本作ですが、独特の世界観を持っています。
HRギーガー調の薄暗い背景に鮮やかな黄色い衣装を纏った自機。深い青色で統一されたグロテスクなオクティ達。効果音のみの音響。そしてコミカルな風貌の仲間パケットは音声合成で喋ります。エンディングで明らかとなるのは自機が女性だったと云う事実です。任天堂のメトロイド(ファミコン)も同様な設定ですが、出典はバラデュークであった筈です。
このゲームもプレイステーション用のナムコミュージアムに収録されていますので、興味がおありの方は購入して見ると良いでしょう。
ゲーム性が薄いと書きましたが、決して詰まらない訳でもなく十分遊べるゲームには仕上がっています。しかし80年中盤のこの辺りからナムコゲームの斜陽が始まりました。
第一の原因はハードの性能が上がって来た事に起因したアイディアの欠落だと思います。それまでのナムコゲームはひとつの斬新なアイディアを核としたゲーム作りをして来ました。少ない容量と低いハードの性能で作り得る最善のものを、それこそ腐心して作り上げていたのだと思います。云ってみれば、これは不可能と云う制限を巧みに利用してアイディア先行のシステムをゲームとして昇華させていたのです。
ハードの性能が上がると今迄のナムコが行って来たゲーム作りの文法が通用しなくなって来ました。容量の桁が増え、グラフィックとサウンドの表現力も段違いに上がった事で、ゲームの本質が見え難くなって来たのが80年中盤と云う時代だったのです。これはメーカーにとってもユーザーにして見ても同様な意味を持つ初めての暗雲と云えるものでした。
その雲間を切って現れたのがカプコン、SNKなどに代表される新興メーカーの台頭です。これがナムコ衰退の第二の原因となりました。
特にカプコンは業界に新しい風を巻き起こしたと云えるでしょう。美麗なグラフィックを最大の武器として、奇抜なゲームタイトルを掲げるとゲーム内に物語性まで組み込みました。そしてそれまでのゲームには見られないほど多彩なアイテムやパワーアップなどを大盤振る舞いしてユーザーを喜ばせようとしたのです。
カプコンのゲームに独自性があったかと問われれば、正直無かったと云わざるを得ません。悪く云えばそれまでにも存在した内容の焼き直し程度でした。しかし、ユーザーは美麗なグラフィックに目を奪われ、直接的なアイテム、パワーアップシステムを歓迎したのです。
ゲームの生みの親はアタリでした。育てたのは間違いなくナムコです。そうして成長した息子たちカプコンらがゲーム業界をリードし始めたのです。
やったもん勝ち的なえげつなさが業界に蔓延した感があります。タイトーやセガなどの古参メーカーもその流れに乗りましたが、ナムコだけは自らの矜持を大事に思ったのか躊躇していたように見えました。結局は時代にアジャスト出来なかったのです。以後ナムコは迎合を余儀なくされたのですが、時代の変わり目を敢えて無視した為か乗り遅れ、全てが後手に回るような悪循環に陥りました。
今回紹介した「バラディーク」の他「メトロクロス」「モトス」あたりが最盛期のナムコが持っていた輝きを鈍くではありますがかろうじて保っている佳作たちと云えるでしょう。
当時のナムコの素晴らしさを知っているユーザーは、この頃の作品をどのような印象で以て捉えているのか知りたいところです。
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