ハレーズコメット
1986年にタイトーから発表されたビデオゲームです。
この作品は理屈抜きで爽快感を味わえるゲームです。強制縦スクロールのシューティング物なのですが、内容としては何ら目新しい部分もなく、当時のグラフィックレベルから考えても貧弱な印象を受けざるを得ません。唯一アイディアらしいのは、画面上部から現れた敵を下方へ打ち逃してしまうと、画面外にある星が攻撃されたとする設定でダメージを受けてしまう事です。この価が100%になってもゲームオーバーとなります。
自機のパワーアップが極端過ぎるくらい上昇し、最強の状態になれば画面内をほぼ全てカバーし得るほどの弾量を発する事が出来ます。弾のグラフィックが透明感のある緑色で統一されている事と、敵破壊音よりも自機弾の発射音にボリュームが割かれている事で、非常にシャープなゲーム性を提供してくれています。
当初の印象としては面白いけれども独創性に欠けるタイトーらしいゲームだなと思いました。後日知ったのですが、このゲームの作者はMTJ氏だったそうです。「バブルボブル」「レインボーアイランド」「サイバリオン」等オリジナリティー溢れるゲームで有名な氏でしたので、これは非常に意外な事実でした。また当時のタイトー社長に「ギャラガを作れ」と命令されたと云う事も雑誌で読んだ記憶があります。「ハレーズコメット」と云うタイトルもハレー彗星の飛来年だったから付けられた安易なものでしょう。
この話を聞いた後で思ったのですが、本作には或る種の妥協が存在しているのではないでしょうか。
抗えない社長命令のもと「ギャラガ」に見えなければならないゲーム作りを余儀なくされたMTJ氏は、どうにか独創性を盛り込もうと腐心したのですが、発句が類似ゲーム作成である為にモチベーションも上がらない。その結果どうせなら面白いだけのゲームを作って見ようと開き直った……こんな感じではなかったかと想像します。
元来システマティックなゲームシステムを構築する技術に長けていた氏ですので、そうした妥協の元でも本作は十分に楽しめるゲームへと仕上がっています。自機の強さを或る程度無効にする敵の攻撃方法などにその一端を見出す事が出来ますね。
優秀な人材であれば独創性を無視された土壌でも力を発揮する事が可能だとも教えてくれる教材として、本作は語り継がれる意味を持っているのではないかと考えます。
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