サクリファイス
ロシアの映画監督アンドレイ・タルコフスキーの遺作で1986年に公開されたフランス映画です。
タルコフスキーは世界的に見ても偉大な監督なのですが一般的にはあまり知られていないと思います。最も有名な作品は「惑星ソラリス」でしょう。これは最近ハリウッドでリメイクされましたが全くの別物だと思って下さい。およそ本来のテーマからは懸け離れています。
タルコフスキーの作風は哲学を映像で綴ると云うもので、一切の説明がないばかりか、過去と現在または夢と現実が混在している難解なものです。映画に娯楽を求める向きの方には退屈をしか提供しないでしょう。
しかし、少しでもタルコフスキーの世界を垣間見る事が出来たなら、彼の綴る美しい映像詩に時を忘れて夢中になる事と思います。
「サクリファイス」は自己犠牲の映画です。平穏な休日を過ごす家庭に突如核戦争の暗い帷が降り、家族を守りたいとする男が魔女と平和を取り戻す契約を結びます。その代償として男は最も大切である家を消失しなければならなかった…と云う内容なのですが、これが映像のみで語られて行くのです。
タルコフスキーの映画としては台詞も多く一義的な物語は把握し易い方だと思いますが、それでも昨今のハリウッド映画などとは比較にならないほど難解だとは思います。
上の要約も私が感じたままを書いただけなので、実際の物語と内容が合致しているかどうかは分かりません。
タルコフスキーの作品は他に「ノスタルジア」「鏡」「ストーカー」などがありますが、いずれも物語の説明をするのが困難なものばかりです。でもこれで良いのではないでしょうか。見るものに万別な印象を与えてくれる映画があるだけでも貴重だと思います。私達はタルコフスキーが綴る映像詩を見たまま感じたままに味わい、ただ共通の感動を受け取れば十分なのです。2時間ないし3時間の中で与えられた脳は理解しないでも、心に刻まれる感覚だけを大事に仕舞って置きたいものです。
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