嵐が丘 / ケイト・ブッシュ
1978年ケイト・ブッシュが19歳の時に出したデビューシングルです。
同年に発表されたアルバム「天使と小悪魔 (洋題 : The Kick Inside)」に収録されています。
良く出来たポップチューンである本作は、彼女の独特な声と特異なキャラクターに依って本国イギリスでは瞬く間に大ヒットしました。
Eブロンテの同名小説から材を取った曲で、複雑な家庭環境と愛憎劇の中にある一瞬の心理を描くものとして作られています。
ケイト・ブッシュはピンクフロイドのDギルモアに見出されて音楽の道へと歩を進めた人なのですが、現在の女性シンガーソングライターの雛形ともなった閨秀作家と云えるでしょう。それ以前にも少数の女性シンガーソングライターは存在していましたが、どちらかと云うとキャロルキングなどのように地味な裏方の存在でした。
容姿と才能を兼ね備えて表舞台に打って出た最初の存在として有名なケイト・ブッシュは、現在で云う不思議少女の祖でもあります。
鼻から頭に抜けるようなハイトーンボイスはいま聴いても独特な新鮮を提供してくれますし、ライブパフォーマンスもパントマイムと激しい踊りを主とした奇妙な感覚を見る者に与えます。詩も他にはない独特な雰囲気を持っています。近親相姦を思わせる内容が多い事も特徴でしょうね。
それ以上に目つきが怪しいと思わせます。視線がどこにあるのか判然としません。それでいて自然なセックスアピールを感じさせる佇まいもデビュー当時から身に付けていました。
メロディメーカーとしての才能も非凡であり初期の2枚のアルバムでは、ハイトーンボイスに絡めた極上のメロディを作り上げて確固とした存在感を業界に残しました。これは007シリーズのタイトル曲を依頼されている事ででも知れます。しかし、予定調和的な曲作りをしたくないとして断っているのも彼女らしい逸話だと思えます。
地位と名声を獲得したケイト・ブッシュは、3枚目のアルバム「魔物語」でセルフプロデュースを務めるとそれまでの作風から逸脱して行きます。4枚目のアルバム「ドリーミング」では本格的に監修を行った事でそれまでのファンが全て離れて行ったと思わせるような狂気の世界へと進んでしまいました。甘いハイトーンボイスは影を潜め、オーバーダビングを多用し始めた事も原因です。当時のファンにとって「ドリーミング」はまさしく悪夢のようなアルバムだったと云えるでしょう。それ以降は現在までリスナーを限定する独自路線を歩み続けています。
ケイト・ブッシュは女性アーティストとして自らの進む道を全うしている初めての存在だとも云えると思います。日本では「嵐が丘」意外ほとんど知られていない彼女ですが、イギリスでは同じく女性アーティスト達から大きな尊敬を未だ集めています。近年、影響力の大きいアーテイストだけに贈られるクラシックポップス作曲賞なども受賞しています。
来年あたりに通算8枚目のオリジナルアルバムが発表されるらしいので、これを機に「ウーマンズワークス」たる彼女の生き様を勉強して見てはいかがでしょうか。ハイトーンボーカルに抵抗のない方でしたら初期の2枚は大変お奨めのアルバムになっています。ただ、それ以降のアルバムは絶対に購入しないで下さい。間違いなくケイト・ブッシュ嫌いになると思われます。
しかし順を追って聴いて行く事で彼女の毒が貴方を魅了して離れなくしてしまうかも知れませんが。
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コメント
ここで特集やってますよ!
http://www.ongen.net/
投稿: U | 2005/11/17 10:21
http://www.ongen.net/international/artist/feature/kate_bush/index.php
このページですね。
視聴も出来るので興味のある方は是非。
「センシャルワールド」は私の中でケイトのナンバー1アルバムです。
因みに新譜の方はちょっと微妙な出来映えかなあ……
投稿: 管理人バブシカ | 2005/11/17 22:59