パックランド
1984年にナムコから発表されたビデオゲームです。
本作をゲームセンターで初めて見た時は驚きました。それまでになかった滑らかなアニメーションに感動したのです。8×8ドットで構成されたキャラクターが当たり前だった時代に突如現れた32×32ドットのパックマンとモンスター達は、新しいゲームの可能性を予感させるに十分な衝撃を持っていました。
ディズニーアニメを想起させる世界観と短い旋律で奏でられるキャッチーなメロディも素晴らしい出来映えです。
操作方法がまた独特で3つのボタンのみを使用します。コンパネの並びで云うと、左移動ボタン、右移動ボタン、ジャンプボタンとなっています。移動ボタンを押す間隔でパックマンの速度が変わる為に、始めた頃は難しく感じるのですが、慣れるに従いリズミカルな感覚を提供してくれる優れた操作系統だと思います。
ゲーム内容は様々な障害やモンスターをかわしながら右方向へ進み、ゴール地点まで辿り着くと1面クリアとなります。道中にはパックマンお馴染みのパワーエサがあり、この時だけ敵であるモンスターを倒す事が出来ます。
3面クリアしてフェアリーを妖精の国へ送り届けると、今度は左方向への帰路につきます。この時は妖精の女王にもらった浮遊靴を所持しているので、空中でのジャンプ移動が可能となっています。これは一種のボーナスステージとも云えますね。
独特の浮遊感を味わいながらMs.パックマンとパックBabyの待つ家に帰ると1ワールドクリア。全8ワールドの32面構成で以後ループゲームとなります。
本作はこの翌年発売される任天堂「スーパーマリオブラザーズ」のお手本となったゲームと云えます。ゲームシステムの類似は指摘するまでもなく、隠し要素の詰まったところなども多大な影響を与えています。
本作にある隠し要素は障害物(面スタート時スコアの十の位に対応)を進行方向から逆に押す事で作動します。
頭上からの攻撃を防げるヘルメットを主として、無敵である透明パックマン、ワープ、エクステンドであるスペシャルパックマン、7色の風船などがあります。
その他にもパワーエサ使用時に敵を或る順番で倒すと現れるラッキーパックマン、或る場所でジャンプすると咲く花、風船に混じって出現するギャラクシアンの敵ボスなど、様々な仕掛けが用意されています。
また面クリア時にタイミングよくジャンプする事で、芸術点として7650(ナムコ)点が加算されるオマケも付いています。
敵の頭上に乗れると云うアイディアもスーパーマリオに受け継がれている部分ですね。
本作はゲームシステム、ポップなグラフィック、ゲームならではの世界観と云う意味でナムコゲームの1つの頂点を示した名作だと思います。現在の脂ぎったゲームに較べると、シンプルな本作のゲーム性は薄く思えてしまうかも知れません。しかしゲームがゲームらしくあった時代に現れた物語性を打ち出した最初のアクションゲームだと云う事が出来ます。
映画を研究する人がエイゼンシュテインを見るように、また文学を志す人がシェイクスピアを読むように、近代ビデオゲームとしての原点を見詰めてみるに「パックランド」は格好の材料となっています。慌ただしいスピード感や畳み掛ける物量の中からは決して見出せない、忘れていた新鮮な楽しみ方がきっと隠れていると保証致します。
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