ゼビウス(2)
1983年にナムコから発表されたビデオゲームです。
当時社会的なブームまで巻き起こした本作のゲームシステムを簡単に見てみようと思います。
強制縦スクロールシューティングの雛形となったのは周知の事実ですね。これ以前にも縦スクロールのゲームは存在したと思うのですが、今では全く印象にありません。それだけゼビウスが衝撃的だったと云う事でしょうか。
総天然色に見える背景が絶妙な速度で画面下へ流れて行きます。配置された地上物を破壊する為の自機移動速度が本当に絶妙と云えるバランスから成立されています。これに関連して、敵の動きや攻撃方法などからプレイフィールドが広く感じられる点も特筆すべき部分です。
操作は8方向レバーと2つのボタンを使用します。
空中物と地上物を別のボタンを駆使して破壊しなければならない所が斬新でしたね。当時このようなゲームがなかった為にかなり難しく感じました。
空中用の「ザッパー」が高速で3連射出来る爽快感も新感覚だったと云えるでしょう。それまでのゲームは自機攻撃力の低い事が当然であり、それを工夫する事でゲームらしさを作っていた感がありました。
ゼビウスの自機「ソルバルウ」は高性能の最新鋭機と云う設定で、単身敵を撃破しに行くのですから当然の性能とも云えると思います。ガンダムがザク、ドム、ゲルググと順番に倒して行くようなイメージとも云えますね。
地上用の「ブラスター」は自機前方に照準を持っており、敵と重なった時に弾を発射すると撃破出来ると云う仕様です。単発の武器ですが一撃必殺の強さを持っています。私はここにスターウォーズのプロトン魚雷のイメージを抱きました。着弾点に赤い印が残るのも印象的な演出だと思います。
また当時は8方向レバーで画面内を自由に動き回れる事も新鮮だったのです。空中武器、地上武器を使い分ける事と相俟って本当に存在する空間を飛行しているように思えました。これは現在に本作を遊んでいても得られる稀有な感覚ですね。矛盾のない世界観から作り出される特殊な印象とも云えるでしょう。
画面内を自由にと書きましたが、実際には自機照準が画面からはみ出す事がないので、移動可能範囲は画面下から3分の2程度になっています。これはゲームシステム上の制限として上手く機能している部分です。
空中物である敵キャラクターは画面上部から現れて、自機と縦軸が合うと弾を発射して逃げて行きます。これはほぼ全ての敵が持つ基本的な動きです。作者である遠藤雅伸さん曰く「敵だって死にたくないのだから考えて行動する筈……」今迄のゲームにはなかった素晴らしい発想ですね。敵が単なるヤラレ役とはなっていないのです。敵機に搭乗した操縦士が恰も存在するような動きを見せるアルゴリズムが組まれている事に感動してしまいます。
地上物である敵はマップ上の決められた場所に配置されています。この配置がまた絶妙で並び方や見せ方も絵的なセンスを持ち考えられたものとなっています。遠藤さんが持つ美的感覚の面目躍如と云ったところでしょう。
地上物には様々な種類の敵が存在しています。単発砲台である「ログラム」、それを連結させた「ボサログラム」。多発砲台「デロータ」、その強化板「ガルデロータ」。移動砲台「ドモグラム」。前線レーダー「ゾルバグ」。貯蔵庫である「バーラ」、巨大貯蔵庫「ガルバーラ」。地上用戦車「グロブダー」。
全ての敵に名前が付いているのは勿論の事、存在する意味までも設定されているのです。ここまで考え抜かれたゲームはそれまでには存在しませんでした。空中物に関しても名前から開発経緯に至るまで設定されているのです。
ここまで考えられているからこその世界観と云えるでしょう。その構築の厳密だった事には、以後現れた幾多の二番煎じゲームには決して真似出来なかった事実からも実証されています。
そして隠れキャラである「ソル」が存在します。これは地上の或る場所にブラスターを打ち込むと出現します。見た目だけではどこに存在するのかさえも判然しません。唯一ブラスターの照準が重なると赤く点滅して知らせてくれるのです。全16エリア中に45本も隠されています。
「ソル」を初めて見た時は本当に感動しました。
当時私の通っていたゲームセンターにゼビウスをやり込んでいる高校生のグループがいたのですが、彼らはいつからか長い巻物のようなコピー用紙を見ながら遊ぶようになりました。そうして一人が画面を指し示し、プレイしている人がその近辺でボタンを連打しているのです。
中学生になったばかりの私は金銭上の都合で難度の高いゼビウスを殆ど遊んでいませんでした。専らギャラリーとして美しい画面を楽しんでいたに過ぎません。
偶然いつものように画面を覗き込むと、何もない地面からニョキニョキと塔のような物が生えて来るではありませんか。本当に衝撃的なフィーチャーでした。驚いている私を見た高校生の一人が得意気にソルの事を教えてくれました。敵が地中深くに隠したエネルギータワーで出現させると2000点、生え終わって破壊すると2000点。よほど重要な建物なんだろうね。それと2P側では影の部分を打たないと破壊出来ないよと。
私はこの事件以降ゼビウスを本気で遊び始めました。見様見真似で打ったブラスターから現れたソルを見た時は筆舌し難いほどの感動を覚えました。そうして遊び込むほどに当時のキャッチコピーであった「遊ぶほどに謎が深まる」を実感したのです。
「ゼビウス」以前に遊んでいたゲームが全て子供騙しにしか思えなくなったほどです。これは当時本作を体験した人全てが感じた真実ではないでしょうか。それほどまでにゼビウスの世界がリアルに充ち満ちていたのです。
記憶の皺が興奮してゲームシステムの話から逸脱してしまいました。続きは明日にします。
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