沙羅曼蛇
1986年にコナミから発表されたビデオゲームです。
名作「グラディウス」の続編として登場した本作もコナミ側の自信の現れからか専用筐体でのみ販売されました。中解像モニターに描き出される繊細かつ大胆なグラフィックと迫力のあるステレオ音響はゲームの雰囲気を大いに盛り上げてくれましたね。出荷台数もかなり多かったと思われます。
グラディウスの続編であるにも関わらず、最大の特徴であったパワーアップゲージのシステムが採用されていない事実は意外とも云えます。赤い敵編隊を全滅するとアイテムが出現し、それを入手した瞬間にパワーアップすると云う直接的なシステムが取られています。ゲーム性をダイレクトに感受出来ると云う意味で本作に於いてはこの方式が最良であったとも思います。
ぱっと見た感じでは前作を踏襲した内容に思えるのですが、実際には様々な部分に改良と改変の跡を見出す事が出来ます。
分かり易いところでは、奇数面は横スクロールで偶数面が縦スクロールとなっている点。前出したパワーアップシステム。最強パワーアップした状態で遊ぶ事を前提とした面構成と難易度。それに伴いエクステンドを廃止した潔さ。ミサイルを上下に発射出来る事で生まれた新しいゲーム性。バリア効果の変化など、かなりの多岐にわたります。
そうした全てが計算されていて制作者の意図したものに仕上がっているように思えます。ここが煩雑な企画であった前作と最も相違する部分であると云えるのではないでしょうか。
コナミの作品はどちらかと云うと、雑に作られたバランスの悪い未完成品が多い印象があるのですが、本作の完成度は群を抜いて優れています。グラフィックとサウンドを含めてビデオゲーム至上でも最もトータルバランスの考えられた作品と云っても過言ではないでしょう。
本作は完全なパターンゲームとなっています。ゲーム内の全ての構成を暗記して行動する事で延々と遊ぶ事が出来ると云う訳です。毎回のプレイが同一になる退屈さからパターンゲーム=駄作と云う向きもあるとは思いますが、本作に限って云えばそのような印象は全くありません。それどころかパターンゲームである事の利点をゲーム性へと巧みに組み込んで発展させているのです。
パターンゲームの利点とは、攻略して行く段階の楽しさに凝縮されていると云えます。個々の場面を安全に効率よく立ち回れるよう試行錯誤して完成させる知的な面白さとも呼べるでしょう。そして攻略する箇所が減って行く事によって寿命も短くなってしまうものです。ここにパターンゲームの善し悪しが宿命付けられています。
本作においてもこの問題は残されているのですが、その上を行くゲーム性が存在しているのです。
それは「緊張感」と云うゲーム性です。難度の高い本作ですので、攻略法に沿った動作をかなりの精度でトレースしなければ即ゲームオーバーとなる可能性を持っています。攻略した後で新しい楽しさを感じられるように作られているのが白眉であると云えるでしょう。
自機の攻撃力が異様に高い本作の特徴として、他のシューティング物と比較すると細かな操作は必要とされていない分、自機を攻略法に沿った流れで操作しなければなりません。雨霰と降り注ぐ敵の弾と破壊不能な障害物を避けつつ攻撃する爽快感。これが「沙羅曼陀」のゲーム性です。そして、一瞬の誤操作でゲームオーバーになるシビアな仕様がパターンゲームの退屈さを感じさせない理由となっているのです。
エクステンドが存在しないゲームは珍しいのですが、敢えてそうする必要があったからこその無駄として省かれたのだと思います。
定期的に遊びたくなる名作のひとつですね。このゲーム性とグラフィックは現在でも通用する完成度であると自信を持ってお奨め出来ます。
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