ピーターパックラット
1985年に米アタリ社から発表されたビデオゲームです。
内容はネズミのピーターを操り面内に散らばっている宝物(ピーターにとっての)を集めて巣に持ち帰ると云うものとなっています。
8方向レバーと2つのボタン(ショット、ジャンプ)で操作します。
サイドビューのジャンプアクション物だと思っていただければ分かり易いのですが、国産のゲームには見出せないアイディアとセンスが秀逸です。
当時はナムコがアタリゲームの代理輸入を行っていた事もあり、比較的大きなナムコ系列ゲームセンターではお馴染みの作品だった思います。
「マーブルマッドネス」「ガントレット」「ペーパーボーイ」「ジェダイの復讐」「インディアナジョーンズ」などアタリのアップライト筐体が居並ぶさまは子供心にとても壮観でした。
その何れもがお洒落な佇まいを有していて、内容も独創性に富む画期的なゲームばかりで私達を楽しませてくれましたね。
「ピーターパックラット」はその中にあって短命に終わった地味な印象もある佳作なのですが個人的には大好きなゲームです。
ポップでハイセンスなグラフィック、素晴らしい音色のサウンド、テンポの良いゲーム内容、良好な操作性……非を暴く事が難しいほどの完成度です。
しかしマイナーな感が強く日本でヒットしなかった理由もあります。先ず面数が少なくやや単調に傾き易い内容であった事が挙げられます。
80年代中盤と云うとナムコに斜陽の兆候が訪れ、カプコンら新興メーカーが確固たる地位を築き始めたあたりだと云えるでしょう。
本作はどちらかと云うとそれまでのナムコゲームに近いゲーム性を持っていました。簡単に云えば「始めにゲームシステムありき」の内容です。限られたアイディアの中でシステムを構成しゲームとしての面白さを追求するスタンスとでも説明すれば良いでしょうか。
一方カプコンやSNKのゲーム作成のスタンスはまた違った手法が取られていました。「有り物のシステムに過剰な装飾を施して快楽を追求しよう」的なものだったと思います。リアルに向かうグラフィック、メロディよりもリズムを押し出した音楽、アイテムの大盤振る舞い、インパクトのデカキャラ、面白ければ何でもあり的な方向性です。
時代の流れが後者を求めていたのは確実でした。
「ピーターパックラット」は時代遅れと見なされて見向きもされなかったのだと思います。以後、ナムコはもとよりビデオゲームの祖アタリ社さえも時代の波に乗り切れず落日を経験してしまうのは周知の事実です。
そんな時代の波間を過去と呼べる今だからこそ不遇の作品である「ピーターパックラット」をMAMEで遊んでいただきたいですね。ゲームの本質とはどこにあるものなのかを勉強するには格好のテキストであるとも思います。
米国の作品と云う事で多少の癖もあり分かり難さは存在しますが、或る程度を理解した暁には抜群に楽しいゲーム性を提供してくれます。百聞は一見に如かずです。先ずはショットボタンを連打して敵を気絶させたら飛び乗ってピーターを操作する事から始めましょう。
でも、ワニやフクロウに乗るネズミの絵面はちょっとおかしいかも知れません。
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