バーチャファイター(3)
1993年にセガから発表されたビデオゲームです。
1991年のストリートファイターⅡから始まった対戦格闘物なのですが、爆発的な支持を経過した’93年当時は、2D格闘物に対する飽和感と閉塞感がゲームセンター内に少なからず存在していました。
ストⅡの亜流作品が氾濫する事でプレイヤーは混乱し、対戦筐体を専有し続ける常連客に一般ユーザーは戸惑いながら踵を返すと云う状況が見受けられました。
勇気を振り絞って乱入した一般ユーザーが常連にいたぶられて悄然として帰途に着く光景も日常だったと云えるでしょう。
一般ユーザーにとって遊びたくても遊べないジャンルが対戦格闘物だったのです。
そのような状況に登場したのがバーチャファイターでした。当初はセガから出た対戦格闘物と云う事で新しいもの好きのマニアが飛び付きましたが、それまでのストⅡ系対戦格闘物から流用出来ないテクニックと新しいルール、低いゲーム性に面白さを見出せず早速と諦められて人気も出ませんでした。
しかし、プロジェクターを使った専用のメガロ筐体は集客効果に秀でていましたし、ひとつのコンパネに1Pと2Pのレバーが配置されている都合上、他人に乱入される気遣いもありませんでした。
ここで以てバーチャファイターは一般ユーザーがマニアに気兼ねする事なく初めてでも遊べる対戦格闘物と成り得たのです。
余談ではありますが、同時期に発売されたスーパーファミコン用のストリートファイターⅡが未曾有の大ヒットとなったのも、ゲームセンターで遊べない組の功績が大きかったと思います。
そうして既知のようにバーチャファイターは一般層を巻き込んだ大ヒット作品となりました。
この頃になるとセガの通常(アストロ)筐体を組み合わせた対戦台がゲームセンターに多く見られるようになり、遅ればせながらマニア達も遊び始めたのですが、一日の長たる一般ユーザーがマニアに連勝すると云う逆転現象を起こしたのです。
それまでの対戦格闘に慣れ親しんだマニアであればあるほどバーチャファイターは難しいゲームだったと云えるでしょう。ガードボタンを使う操作系統……飛び道具の存在しないリアルなルール……技の攻撃属性、判定などを理解しなければ勝てない知識に頼った内容……反射神経だけでは太刀打ち出来ない駆け引きと確率の世界……。
対戦格闘マニアに初めて訪れたアイデンティティ・クライシスの瞬間でした。
バーチャジャンキーと云う言葉まで作られた本作の功績は、それまで対戦格闘に興味のなかった一般ユーザー、また興味はあったけれども遊べなかったユーザーをマニアにまでしてしまったところにあります。どう見ても対戦格闘などやる筈のない女性ユーザーまで多く虜にしてしまったほどです。
そして、マニアと一般層の間に高く聳え立っていた壁を崩す事に成功した稀有な存在だったと云えます。
これは鈴木裕氏を含めた開発者の意図するところではなかったと思いますが、時代の流れを味方に付けた必然を感じます。当時のタイミングで登場したからこその名作と呼べるのではないでしょうか?
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