Aerial / Kate Bush
12年振りに発表されたケイト・ブッシュの新譜です。
前々作センシュアルワールド(’89)でひとつの頂点を極めたケイトは、次作レッドシューズ(’93)で作品的過ちを犯し商業的にも失敗した事で、子育てに徹すると云う理由のもと隠遁生活に入ってしまいました。
今回の復帰は息子バーティが成長し手間の掛からなくなった事と、ケイトが音楽家として創作活動を渇望し続けて来た結果と見る事が出来るのではないでしょうか。
長いブランクを経て生み出されたエアリアルは紛れもなくケイトのアルバムだと感じられます。
購入直後に聞いた正直な感想は「毒がなくなったな」と云うものだったのですが、繰り返し聞いている内に耳に馴染んで来ました。
センシュアルワールドのような過激さが影を潜めて、平凡にこそ尊さを求めるケイトの姿が確認出来ます。
2枚組アルバムなのですが、1枚目の最初はシングルカットされたKing of Mountain(お山の大将)から始まり、数字の美しさを再確認させる円周率の歌、息子バーティへの母性愛に彩られた歌、切ない日常にある洗濯機の歌、透明人間になる方法……と続いて行きます。或る意味ケイトワールド全開ですね。
上にある画像のジャケットも凝っています。
声紋を象った島が上下対象に伸びているのは2枚組のアルバムを意識させているのでしょう。なかなか洒落たデザインだと思います。
ケイトのファン以外の方が聞いて良いアルバムだとは云い難いのですが、12年の間を埋めてくれるアイテムとして私は最近ずっと聴き続けています。激しい曲を脳が受け付けなくなった所為か平凡単調に心の落ち着きを見出しているからなのかも知れません。
ただ残念なのはケイトの歌声に妖艶な伸びがなくなった事実です。これはブランクによる喉の経験不足か耳の悪くなった証拠とも取れます。しかし許容出来る範囲のものなので次回作での完全復活を期待したいところですね。
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