ファンタジーゾーン X68000
1987年にシャープからアーケード基板と同等のCPU性能を持ったパソコンX68000シリーズが発売されました。これに依りそれまでのPCでは夢のまた夢であったアーケードゲームの完全移植が可能となって行ったのです。
当時の移植版は現在の短いサイクルとは違い、最低でも1~2年の月日を待ってから行われるのが普通でした。それに関しては色々な事情もあったのでしょうが、1作品の寿命が現在ほど短期間で消費され尽くされる事のない牧歌的な時代だったとも云えます。
ファンタジーゾーンはセガから1986年に発表されたシューティングゲームです。
X68Kへの移植はやや遅れた89年あたりだったと記憶しています。オリジナルもCPU性能が同等のものでしたので、電波新聞社の素晴らしい技術から正に完全移植と云えるほどの出来映えを誇るに至りました。
しかし大変人気のあるファンタジーゾーンでしたが、発表されてから3年の月日が流れています。間にセガMk.Ⅲ版が発売されて盛り返したとは云え、絶頂期の人気と較べると翳りがあった事は否めません。
そうしてスーパーマリオ以降のゲーム業界が育んだ「隠し要素ありき」がここに需要として合致したのです。
X68K版ファンタジーゾーンにはオリジナルの完全移植と云う最大の売りの他、ユーザーがあっと驚く隠し要素が込められていました。
それは或る法則のもとゲームを進行させて行くと現れる「スペースハリアー面」でした。
上の画像がその隠し面なのですが、ファンタジーゾーンの世界観を逸脱させない素晴らしいオリジナル要素として成形されています。
もともとスペースハリアーとファンタジーゾーンはファンタジーランドと云う架空世界を同じくしている設定であった為、グラフィカルな矛盾も殆ど感じさせないものとなっています。
隠し面の出現方法は以下の通りです。
ゲーム画面下部に表示されている基地レーダーを頼りに1面であれば一番右のものを破壊します。そうすると通常のコインの代わりに、隠し面への切符たるアルファベットの書かれた特殊コインが出現。
2面であればレーダーの右から二番目のものを破壊します。これを7面まで繰り返す事でアルファベット特殊コインがH.A.R.R.I.E.Rと形作られるのです。
そして7面をクリアした時点でスペースハリアー面に突入します。
このオリジナル面の出来映えの素晴らしい事はもとより、その出現方法が良く考えられていると感心します。
完全移植と銘打っている以上は下手な付加要素を入れないで欲しいと云う気持ちもユーザーに依っては持っているものと思われます。しかし3年落ちの作品であればオリジナルには存在しなかった何らかのオマケ要素があって然るべきだとも云えます。
ハリアー面の出現条件は以上のような二律背反する意見を尊重したかのようなシステムの上に成立されています。
ファンタジーゾーンのゲーム進行は基本的に自機のスタート地点から右(または左)へ進み続ける事を余儀なくされています。任意スクロールのゲームですので、必ずそうしなければならないと云う理由はありませんが、時間を掛けると基地を破壊した際に貰えるコインの値段が下がってしまうので、時間短縮の意味も込めてそうせざるを得ないようになっていると云えるでしょう。
ハリアー面を出現させるには通常破壊しない場所の基地まで移動しなければならないので、隠し面へと進もうとしない限り絶対に出現させられないのです。
これならばオリジナルを堪能したいユーザーが不可抗力として隠し面を出してしまう可能性もありません。
また隠し面の出現方法がゲームシステム上無理のないものになっているので、オマケ要素を期待するユーザーにも無理なく楽しめるようになっているのです。
裏技末期のファミコンゲームのように点数の下何桁を合わせて……と云う理不尽な隠し要素には辟易しますが、このようなシステムに組み込まれた隠し要素は大歓迎ですね。これが為にX68K版ファンタジーゾーンはやや古い作品にも拘わらず名作たり得たのではないかと考えられます。
最後に隠し面についてですが、ファンタジーゾーンまたはスペースハリアーファンの方には是非とも実際を見ていただきたいような要素が多く盛り込まれていますよ。特に基地を全て破壊した後のプチ・ボスラッシュは必見です。
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