
胸部の塗装をしました。
白い箇所と同様な塗装法にしてしまうと大袈裟に見えるだろうと思い別のやり方を模索。
結果的に銀色を用いたドライブラシを採用する事に決めました。
80年代初期に一世を風靡したドライブラシまたハゲチョロ塗装は、ガンプラをリアルな造形物に見せる代名詞とも云える手法でした。
しかし、初心者を問わず誰でも容易に扱える手法であった為に消費され尽くされ、数年で過去の技術と見なされるようになってしまいました。
私が考えるにガンプラにおけるハゲチョロ塗装、ドライブラシとは、単なる記号化を象徴するものであり、具体性を帯びた一表現方法に他ありませんでした。
施された塗装の下にある金属を露出させる表現はそれだけで美術的な価値を感じさせる技だと思います。
何が何でも銀色を用いリアルメカに見せなければならないと云う間違った認識が、その優れた表現を飽和させ時代遅れな手法として放擲してしまったものと考えられます。
当時小学生だった私もその例に漏れずドライブラシの虜となっていました。銀色ドライブラシをしたいが為に殆どの模型(ガンプラと問わず)を黒一色で塗っていたほどの重症でした。
これは私の極端な性格を表すものなので参考にならないとは思いますが、当時はそれだけメジャーな手法であり皆に愛されていた技術だったと云えます。
模型を作らない方の為に説明しますとドライブラシとは以下のようなものとなっています。
筆の先端を軽く火であぶり整えてコシを強くしたものに塗装を付け、その塗料を紙などに何度も擦り付け殆どなきものとします。その上で模型のエッジなどに筆を叩き付ける事で微細な塗料が粒子上に乗りアクセントを付けてくれます。
現在にドライブラシを用いた作例を見る事は先ずありませんね。AFVモデルの一部にちょっとした味付け程度で散見出来る程度でしょう。そうしてその技術も30年前のまま旧態依然として進展が見られません。
と云う事で、現在の目で見ても古臭く感じず不自然に見えないドライブラシ技法を考えて見ました。
上の画像がその習作となっているのですが如何でしょうか? この段階では未完成で以後ウェザリングを施すのですが、大体の感じは掴めると思います。或る程度のリアルさとハゲチョロ塗装の象徴性が出せたのではないかと思っています。
参考になさる方がいるか分かりませんが、一応塗装手順を記しておきます。
(1)パーツ全体にかなり薄めた黒を塗布。半日乾燥。
(2)影になる部分とエッジを中心にクロームシルバーを塗布。一日乾燥。
(3)クロームシルバーを面の中心に向けて柔らかい布で磨き込む。その際塗った境目を適当にボカす。
(4)ノーマルシルバーを使いエッジを中心に剥がれ表現を描き込む。所謂ハゲチョロ塗装。
(5)綿棒を用い面の中心からクロームシルバーと下地の黒を削り落とす。力加減で黒を残したりクロームシルバーを残したりとアトランダム気味に。
(6)ノーマルシルバーで極軽くドライブラシ。
(7)柔らかい布で磨き込む。
(8)以下6と7を数回繰り返す。
ここまでやったのが上の画像となります。因みに塗料は全てラッカーを使っています。この後ハンブロールの黒で薄くウォッシングしコピックのオレンジとブラウンでコピック塗りを施し半光沢トップコートで完成となる運びを予定しています。
クロームシルバーの鈍い光沢がノーマルシルバーのギラつきを抑え、ところどころに露出する下地黒が良いアクセントになっていると思います。灰色に見える部分がプラの成形色なのですが、安っぽくは見えない筈です。
ドライブラシはやっていて楽しい作業なので皆さんに是非お奨めしたい技法です。しかし楽しいだけにやり過ぎてしまう嫌いもありますね。ここだけは注意すべきところだと思います。
最近のコメント