« ゆく年くる年 (上) | Main | ゆく年くる年 (下) »

2006.12.30

ゆく年くる年 (中)

来年早々に生活の地盤が緩む事となりそうです。
いま働いている店が潰れてしまう事になったからです。二十歳の頃に入社して16年……いやはや長く働いたものです。アルバイト採用から始まり程なくして準社員にさせられると、本人の意志とは関係なく店舗の管理者を任される立場となりました。まあ、砕けて云いますとタイトーのゲーセンで店長をやっていた訳です。

仙台の繁華街にある店で、売り上げの良い時分には新宿歌舞伎町に次ぐ坪単価を稼いでいた事もあったそうです。私が働き出した頃には既に右肩下がりとなっていたものの、それでも現在の10倍近い売り上げを誇っていました。
しかし数年前から赤字店舗の烙印を押され、閉店するのも時間の問題かと囁かれていた事もあり心の準備は出来上がっていたのですが、実際に引導を渡されると格別な感慨を提供させられるものですね。
物事に拘泥する性質でもないので悲しいとか悔しいなど具体的な負の感情が生ずる訳でもないのですが、漠然とした寂寥感は確かに残ります。その出所を探れば人に帰結する事でしょう。

私は友達とか仲間と云う表現に虫酸が走るひねくれ者なので安易には使いたくないのですが、便宜上ここでは仲間と云う言葉で進めたいと思います。
小さな店で人員を多く必要としない形態であった為、常に6人程度の最小構成で運営していた事になります。人数の多いところではそれ相応の難しさ、少ないところでもそれなりの問題はあるものだと思います。私たち仲間はその点では上手く交際していた方だと云えるでしょう。会社からは変人の巣窟、落ちこぼれの集まりなどと揶揄される事が多かったものの、皆が皆個性的で善良な人間でした。

個性的とはどう云ったものだと思われるでしょうか?
個人と云う字ズラから見ても人にはそれぞれの特徴がある筈です。千差万別、十人十色、同様が存在しないにも関わらず、敢えて個性的と云う表現が使用される意味を見出だせません。それでも個性的と云う言葉が良い方向で使われる理由は没個性が悪として存在するからです。
没個性とはこれも字ズラ通りに個性を抑えていると云う意味に介せます。個性を隠す理由は世間への迎合として間違いないでしょう。世間とは個が見渡せる程度の範囲でしかありません。人はその狭い世界で自らを恙なく活動させる為に没個性を発揮するのです。特例を許さない日本と云う国家が徳川時代に設えた保守の推薦です。

貴方は流行に乗る事の便利さを痛感した事はおありでしょうか? また自らの経験と知識からのみ導き出される批評眼に重きを置いて言動を顕わとしていますか? また他人の批評眼を相違からのみで批判した事がありませんか?

個性とは偽らない自分です。阿る事を知らない思想です。他人を遮らない融通です。そして他人を労る行動が人間を人間らしくする道徳なのです。ここに至って個が完成するものだと信じています。

私と職場を同じくする仲間はこの点に於いて個性的でした。逆に云うと、自らに嘘をつき見栄を張る人、自身がどこから生まれ出たものか判然していない人、自らの庭園を恥だとして公とする事に躊躇する人……これらの人にとっては決して馴染めない職場であった事も想像に難くありません。嘘はその場で容易く看破され、恥部を冗談として周囲に云いふらされるのですからたまったものじゃなかったでしょうね。辞める人は三日と保たず、長くなれば五年、十年選手となる事が実績とも受け取れます。T大学法学部を卒業したにも関わらずフリーターとなってしまった不憫な子まで存在します。これは私たちの責任……なのかな? まあ本人の選んだ道ですから知ったこっちゃないとしても良いでしょう。

仕事と私生活の境界線を設ける事なく密な関係を続けて来た仲間との別れが寂寥感の出所なのは確かです。退職したものの交歓を継続している仲間も存在します。職場がなくなるとこのような人たちとも相対する機会が失われる事になります。中にはニート状態の人もいて、唯一世間への窓口となっている感もあるので残念としか云い様がありません。
だからと云って無理に機会を設けてまで会う必要も感じられなかったりします。世間的に見て、それは仲間ではないのではないか?と云われても仕方がないのですが、ここらへんは自然の流れを重んじるばかりに冷酷と取られる由縁ともなっています。
どうしてもと云う場合はメッセンジャーやmixiなんかで連絡が付けられるから大丈夫だろうとしか考えていないんですけどね。

|

« ゆく年くる年 (上) | Main | ゆく年くる年 (下) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ゆく年くる年 (中):

« ゆく年くる年 (上) | Main | ゆく年くる年 (下) »