恋愛相談室 10
フリーターまこと(30 )の相談
「妹のような存在」
確かに女性はそのような比喩に確実な答えを見付けたがるものです。血縁のない「妹」だからこそ、そう表現しなければならなかった理由が隠されていると云う事実を直感しているからなのでしょう。
貴方のお話を伺っていますと、貴方が「妹」に対して恋愛感情を抱いている事が分かります。そうして他人はおろか自身をさえ誤魔化す為に「妹」を公言しているのだと感じられるのです。
「妹」にせざるを得ない理由は十歳と云う年齢の懸隔。貴方が定職に就いていないが為の生活基盤の不安定。長年苦楽を共にした婚約者の存在する事実が最もなる障害と云えましょうか。
貴方は「妹」に愛恋を感じる前から彼女が語る恋の相談に耳を傾け親身になっていた訳ですね。当初は「妹」の恋の事件の過程や結果に一喜一憂してあげられていた筈です。しかし、いつの頃からか憂いだけが成長して来た事実に行き当たった……。
貴方は「妹」に近付き過ぎて知らぬ間に心を提供してしまったのです。こうなると後戻りは容易い事業ではなくなってしまいました。「妹」を自他に公言し始めたのもその頃の事だと考えられます。
貴方は溢れ出る恋愛感情と一進一退の攻防を繰り広げていますね。正直を突き通したいとする貴方と、罪悪の盾を捨てたがらない貴方が涙の対岸で闘っている様子も見て取れます。そうして「妹」は雌雄の決する時を心待ちにしている……。
戦いに白黒を付けたがるのは幼い子供の我儘に過ぎません。大人の世界では優劣の差に関係なく勝敗が決まる事もあれば、時が停戦を促して闘いをなきものとしてしまう事だって有り得るのです。決着をつけない事が終結に結びつく前例だっても少なくありません。
若い「妹」は今にきっと新しい恋人を見付ける事でしょう。切なさを懐中したまま「妹」の行く末を見守ってあげる事も、「兄」に付随する当然の権利と云えなくもないのではないでしょうか?
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