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2010/04/15

恋愛相談室 4

専門学生タカオ(19)の相談

 片思いとは最も身近な偶像崇拝であると思われます。

 恋をした時に人は過大な期待と身勝手な理想を相手に抱いてしまうものです。このような傾向は特に貴方のような若い男性に顕著だと云えるでしょう。そうして相手のちょっとした言動に期待を裏切られ、また理想の修正を迫られるのです。
 しかし自らに向けられた甘い笑みを認めると、それが引力となり偶像に掌を合わすべく引き寄せられてしまう……これの繰り返しを経験しているのではありませんか?

 「女なんて入れてしまえばどれも同じだ」と豪語する人がいます。私も若い頃は頑なな態度で以てその意見には否定し続けて来ましたが、年輪を重ねた最近では「どうもそのようなものらしい」と同意すべく思想に変化が訪れても来ています。
 勿論、人体的な構造の差異を当然とするならば、男勝手な偏見でしかない考えだとは承知しています。それなのに私は何故そう思うようになったのでしょう?

 統計上、または経験上の話になるのですが、男からの片思いが成就する確立は極めて低く出来上がっています。その理由はと問われれば、女性が感傷の付与を男に許容しない事と浪漫主義に欠けているからだと考えられます。
 女性は大概に於いて刹那にある閃きを尊重します。男は夢想家が多い事から長期にわたる感傷を真摯にも楽しめます。
 女性は先ず腹に重いものを嫌って前菜から片付けようとするでしょう。男は大事な相手を思うあまりにメインデュッシュである分厚い肉を先に提供したがります。
 女性は意固地にも自らの求めていない物を味わおうとする融通を見せません。そうなると男は潮騒に浚われた皿だけを見詰めて、食後の珈琲だけを独り嗚咽する喉に片付けようと腐心するのみとなります。
 男が先に惚れた女性を喜ばせようとするのであれば、寿司屋でカレーかピザを注文するしかないのです。そこには女性の求める閃きがきっと用意されている事でしょう。しかし、これも板前さんが無理を許容してくれなければ反古になる事は明白と云えます。

 「誰よりも彼女を愛している筈なのに」恋に破れた男……貴方が将来口にするだろう常套句です。これこそが女性との絶縁を約束する決め台詞であり、女性を埒外に遠ざける思想となっています。

 貴方がお悩みのように複数の男同士の中に一人の偶像がいる場合、彼らは無言の内にも結託して溢れ出ている恋心を公とはしない努力を互いに認めるでしょう。しかし偶像は貴方がたの知らないところで、いとも簡単に遊び人か水商売の男に汚される運命にあるのです。そうした事実を知った際に貴方がたが表す皮肉を込めた寂しい笑みのなんと惨めな事でしょう。
 「こんな事になるのだったら自分が先に……」無駄な考えです。貴方がたは以下の真理に到達しなければなりません。
 偶像は淡い油彩画よりも濃い水彩画を愛していると云う事実です。

 男女の恋愛関係に需要と供給の均衡はないと云い切ってしまっても差し支えないでしょう。
 そうして男女にとって恋愛の第一義とは間違いなく「性欲」の二文字に代表されています。おや、貴方は否定なさっているようですが、毎夜毎夜飽かずに彼女を妄想の舌で以て汚し続けている事実をどう説明するのでしょうか?
 まあ、「愛しているからこそ彼女と性交したい」と云う気持ちも分かります。しかし、それこそが綺麗事を装った詭弁に他なりません。結局のところ貴方には選択肢が他にないだけの話なのです。一途と云うのは余裕を持たないのと同義語であるとも云えます。

 確実にそして定期的に訪れる愛恋の情……即ち性欲を解消したいのであれば、相手などは妥協出来る範囲で誰でも構わないと云う事になりませんか? これこそが「女なんて入れてしまえばどれも同じだ」とする所以です。

 詰まるところ男にとっての片思いとは、無駄に時間を消費するだけの純情ごっこに過ぎないと云う事になりますね。

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