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2010/04/03

恋愛相談室 8

主婦サチコ(34)の相談

 物理的な時間は太古の昔から変わらないものとして存在しています。しかし貴女の仰るように今よりも若い時分にはもう少し緩慢だったように感じます。
 以前、煙草を一本吸うのに何分かかるのかを計った事がありましてね。大体六、七分だったのですが、こうして意識して見ると確実にその六、七分を体感出来るものでして、時間経過に納得も生まれて来ます。
 ただ意識していない場合に限っては、火を着けてから気付いて見ると吸口まで灰が進んでいたりもするのです。これはどうした事なのでしょうね。
 気候が乾燥しているから燃え易いのか。煙草メーカーが安い紙を使い始めたものか。それともこの年齢になって私の肺活量が上がったものなのか……。
 考えて見るに私の得た答えは「惰性」の一語へと落ち着きました。吸い始めた頃の刺激を忘れ、あれほど好きで美味しく吸っていた煙草ではあったものの、口寂しさを紛らわすだけの存在へと自らが貶めてしまっていたのかも知れません。煙草自体の物理的価値が経済やその他で変化する事はあっても、精神が嗜好するならば物質の価値に貴賤は生じない筈なのですよ。
 改めて一本の煙草を唯一の存在として味わって見ると、これが新鮮で美味しいこと美味しいこと。至福の六、七分を実感出来たのです。

 取り敢えず貴女はそのヤニで汚れた歯を綺麗にしたのち、旦那さんを誘ってラブホテルにでも行ってみる事をお奨めします。彼の立派な一物は高級な葉巻を吸う以上の新鮮を貴女に与えてくれるものと思われますから。

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